子どものお世話のひとつに「予防接種」がありますね
「接種後は副反応がおこらないか不安。」
「おうちで様子を見るときは、何をみたらいいのかしら。」
そういう悩みをかかえる保護者に
臨床検査技師だから知っている「予防接種の準備&気をつけたいポイント」をお伝えします。
【臨床検査技師とは】
身体の不調の原因を探ることを目的に検査業務を担うスペシャリストのこと。病原体や生体メカニズムに関する科学知識(医学・生化学・生理学・情報処理工学など)は、医師と同等もしくはそれ以上のスキルを求められる医療従事者。国家資格のひとつ。
この記事では「接種前の事前調査」「接種当日」そして「接種後」の3つの時間軸にそって
「保護者ができる予防接種の準備・注意点」について10点ほどお伝えします。
この記事では、医療系スペシャリストが気にしているポイントがわかります。
予防接種のなにを調べる?検査技師が気にする2つのポイント
検査技師が予防接種で最も気にするところは
「(細菌もしくはウイルスの)病原性」と「予防接種の副反応」
なんです。
「病原性」というのは
ひらたくいえば、「病原体のパワー」のこと。
「副反応」というのは
身体に異物を入れられた!とあせる「からだの防御反応」のこと。
予防接種の意義を知り、そして万が一の副反応に正しく対応するために検査技師は情報を集めます。
これは親なら気になるところだよね
それでは、誰でもできる調べ方を紹介します。
予防接種前に調べておきたい4つのこと
まず、事前準備としてはこの2点からはじめます。
予防接種前に決めること
- かかりつけ医を見つける
- どの予防接種を受けるか決める
事前準備①:かかりつけ医はどこにする?
はじめての予防接種なら、どこでもいいので「かかりつけ医」を決めましょう。
追記:子どもぎらいなスタッフがいるところはさけましょう…!
最近はGoogle検索などでも評判をさぐることはできますが
「評判(口コミ)」は、あてにならないことが多いです。
ん?そうなんでしか?
医師といっても
医学知識の深さはもちろん
どれほど真剣に(正確な手順で)診察できるかは人それぞれ。
正直医師の腕前は、いってみないとわからないんです。
なのではじめは軽い気持ちでかかりつけ医を決めて、医師の力量をチェックするといいですよ。
事前準備:予防接種を受けるか決める
予防接種というのは、からだにとってマイナスになるものをあえていれることで
将来プラスの働きがけをしてくれることを期待して行う医療行為の1つです。
コロナワクチンがけっこう論争になってるよね
ちょっとしたマイナス面もあるけど、トータルでは大きくプラスにはたらく
そういうありがたさが予防接種の良いところなんですが
時によっては大きなマイナスを引き起こしてしまうことも……
マイナス面をしっかり把握すること
こちらに関しては、専門家が書いた書籍やパンフレットが必要です。
テキスト紹介
もしも専門的なことをくわしく知りたいなら、こちらのテキスト。
検査技師や医師を目指す学生が勉強するテキストのひとつで
今まで医学について知らなかった人が読んでもわかりやすいです。
そんなのを買わないといけないっての?
そこまでしたくない人におすすめなのが『キョウコノワクチン』
『キョウコノワクチン』
公益財団法人予防接種リサーチセンターが保護者向けに発刊しているリーフレット(無料)
公益財団法人予防接種リサーチセンターは、安全で有効な予防接種を推進するための調査研究、予防接種による健康被害に関する因果関係の調査研究及び予防接種による健康被害に係る保健福祉事業を行い、もって予防接種の円滑な実施とその推進に寄与することを目的としています。
予防接種リサーチセンター〈業務内容〉より
『キョウコノワクチン』にはわかりやすい解説があります。
特に救済措置と病原菌(ウイルス)については読んでおく価値はありますよ。
難しい表現もなく、簡潔にまとめられています。
2~3分あれば隅々まで読めますよ
そうはいっても、この資料のどこに注目すればいいでしょうか?
予防接種を受けるべきかはどうやって決めればいいでしょうか?
つづいて「検査技師が接種前に注目すること」を4つほど紹介します。
副反応の症状と発症頻度
予防接種といっても1つの病原体に複数のワクチンがある場合もあり、副反応の発症確率がそれぞれかわってきます。
なので、ワクチンごとに「副反応の内容」と「発症頻度」はぜったいにおさえることにしています。
複数ワクチンの代表はロタワクチン
「ロタワクチン」は「ロタテック®」と「ロタリックス®」があります。2つも比較するのはめんどうですが(職業病のため)両方しらべます。
【副反応や発症頻度でおさえておくこと】
- 発熱や倦怠感、腫れといった副反応は起こりやすいので原則ムシ
- 「腸重積」のような馴染みのない病名はチェック
- 発症確率が35%以上のものは覚えておく
予防接種の案内を自治体から受け取った時に「予防接種と子どもの健康」という小さな冊子もありましたよね。そちらには副反応と発症頻度について詳しく記載されています。
もしも無くしてしまった人は公式HPから102円で買えるよ。
副反応
予防接種の副反応として注意したいのは「馴染みのない病名」。
馴染みのない病名
➡専門書やネットで調べておく
発熱や腫れ、下痢はイメージができやすいですが、「腸重積」になると調べないとわからないですよね。
病名っぽいものは、ネットでもいいので調べておくといいですよ。
発症頻度
発症頻度は35%以上なら気をつけます。35%ということは3人中1人におこりうるということ。わが子が遭遇しても不思議ではありませんよね。
それよりも低いものは「なんとなく」でOKです。
というわけで、検査技師が気にする「副反応」について、まずは収集完了です。
「予防接種と子どもの健康」が手元になくてほしい人は、下のサイトから申し込むことができます↓
健康被害への国からの補償は?
予防接種は稀に重篤な反応が発生することがあります。確率はかなり低いといわれても、わが子がそういう目にあって笑っていられるはずがありませんよね。
もしも重篤な反応がみられたら泣き寝入りするしかないのでしょうか?
おぼえておこう!
定期予防接種には
「健康被害救済制度」がある
日本は、定期の予防接種は法律で接種がすすめられています。そのため、定期予防接種により発生した副反応で、医療機関の治療が必要になったり、生活が不自由なほどの健康被害があった場合は、救済措置として「健康被害救済制度」が適用されることがあります。
ワクチン接種後に明らかにおかしい反応が見られた場合
- すぐにかかりつけ医を受診し、
- 後遺症等が残った場合は
- 救済制度の適用になるかを確認
万が一のことが起こってしまった時は、医療機関もしくは自治体で確認しましょう。
重篤な副反応なんて勘弁して、ってかんじですが心だけでも備えておくと安心ですね。
※予防接種健康被害救済制度について詳しくはこちら↓
ワクチン接種が本当に必要なの?
ちょっとした副反応でもなんだか怖いっていう保護者もいらっしゃいますよね。
ワクチンは人類の叡智の結晶。開発者を信じるべし!
医療従事者であれば、ワクチンを打つかどうか念入りに検討する人もいます。
しかし医学知識のないふつうの人が
ワクチン接種が本当に必要かどうかを判断するのは難しいです。
とりあえず全部受けておいたらええって
新型コロナワクチンのような「これまで未開発の技術を使ったもの」は慎重に検討すべきですが、「生ワクチン」「不活化ワクチン」という長年接種されてきたものはまず安全です。
そのへんは開発者さんたちを信じましょう。
インフルエンザみたいな任意接種も受けたらええで。共働き世帯にとってはお守り代わりになるで。
この病原体なに?おさえたいのは「特徴と症状」
検査技師が気になるもうひとつのポイント病原性。まずは病原体(微生物)を知ることからはじめます。
【病原体のおさえるべき特徴】
- 感染経路
- 病気の症状
病原体の特徴として、感染経路と感染したときの症状についても、医療従事者はぜったいにおさえます。
これなら「キョウコノワクチン」で十分やで
たとえばHibとはインフルエンザ菌b型のことで、口や鼻などから吸いこむことで感染します。
感染による症状は肺炎・細菌性髄膜炎、菌血症、喉頭蓋炎などです。
生ワクチンとなっているものは、子どもの糞便中に病原体が排泄されたりすることもあります。
ワクチン接種後しばらくして、保護者の調子がおかしいなんてこともありえるので、どんな症状がでるのか調べて備えます。
予防接種当日にチェックすることは?
予防接種の予約がすんで当日を迎えたとします。
それでは当日の注意点についてお話します。
受診前にチェックすること2点
予防接種に行く前にチェックすることは、子どもの体調と持ち物です。
子どもの体調の確認方法
子どもの体調はこんなところを確認します。
体調はどうかな?
- 発熱は?
- ぐずりはひどくない?
- なにか心配な症状はない?
受診の30分前くらいに1度検温をし、もしも熱があるようでしたらかかりつけ医に連絡し、「接種する」のか「日を改める」のか確認します。
他にも注意したいのが「ぐずり」
月齢のひくい赤ちゃんであれば「ぐずぐず」いう日もありますが、何回か予防接種を済ませたお子さんの場合、「ぐずりがひどい」時はどこか不調を訴えているかもしれません。
あとはオムツ替え時にオシリかぶれがないか、発疹がでていないか、ひととおり確認します。
予防接種のほかにも診察や薬の処方もできるので、気になることはチェックして問診で伝えましょう。
小児科はママの鼻風邪もついでにみてもらえるよ。うけつけで申し出てみて!
逆に予防接種の日に「控えたいこと」としてはこんなこともあります。
離乳食がはじまってるなら、新しい食材のお試しはやめておくと安心だよ!
食べ物アレルギーも免疫反応になります。予防接種でブーストされる作用機序とはまったく異なりますが、異常の原因を切り分けるのがめんどうなんです。
ゆとりがあれば、離乳食にも注目しておきましょう。
持ち物と服装
持ち物は?
- 接種券
- 母子手帳
- 健康保険証・医療証
- オムツやガーゼタオル
- (歩いているなら)靴下
持ち物ですが、接種券、母子手帳、医療症の3点は必ず携帯しましょう。
診察中におしっこをすることもあるので、オムツやタオルは持っているといいですよ。
病院の床は汚い!スリッパも汚い!素足は厳禁だよ!
服装としては、靴下必須&腕まくりがしやすい洋服にしましょう。
診察することもあるので、上半身を出しやすい服装だと安心ですよ。
肌着がボディスーツだとかなりめんどい!病院ではボタン式の前びらきタイプにしよう
予防接種を受けよう!診察室での注意点
さて病院についたら保護者もドキドキしますよね。
まずは深呼吸して、診察室でのやりとりをイメージしましょう。
それではまずは接種時の注意点から説明します。
接種時の注意点は?
予防接種でびっくりして泣いちゃう赤ちゃんはけっこういます。
それが心のキズにでもなったら、次回からとんでもなく泣き出します。
痛いことをされたときは心のケアが大切。ママはぎゅっと抱きしめてやさしい言葉をかけましょう。
赤ちゃんが「安心」できれば大丈夫
保護者ができること
- 動かないようにしっかり抱っこする
- 大人はどっしりと構える
- 接種後すぐに赤ちゃんを安心させる
針を刺すときに動くのだけは避けたいですね。どうやって抱えたらいいでしょうか。
私のやりかたは膝の上に赤ちゃんをのせ、両手をX字にクロスしておさえこむで。
保護者が不安そうにしていると、その気持ちは赤ちゃんにうつります。どっしりと構えましょう。
接種後は赤ちゃんを安心させることが大切です。微笑んだり優しい声かけをすると、痛くて悲しかった気持ちもはれて、安心できますね。
問診時に質問したいことは?
続いて質問例をいくつか紹介します。
【医療従事者が医師に質問していること】
- 副反応で1番おこりやすいもの
- おこったら受診はするのか
- 他院や夜間救急で診てもらうレベルはどれか
- 副反応で気をつけたいもの
- 発熱時はどうするのか
- 様子見は何時間か
- ここ最近での「重篤な副反応」症例数
- 重篤な副反応を報告した例はあがっているか
- 入浴時の注意点
- お風呂に入ってもいいのか
- 接種部位を洗ってもいいのか
良い質問はかかりつけ医の見きわめになります。事前に仕入れておいた情報をもとに、質問してみるといいですよ。
【例:Hibワクチン】副反応
たとえばHibワクチンを例にみてみましょう。
【Hibワクチンの副反応】
- 接種箇所が赤くなったり
- 腫れる
- しこる
- 発熱
- 食欲不振
- 不機嫌
これらの副反応の中で、特に気をつけるべきものをまず訊きます。
発熱は医院によって処置がまったく違うので、受診の目安を確認しておくと安心です。
重篤な副反応については、どれくらいの症例数があるかは気になるところですよね。それよりどういった症状がみられるのか知らないのは危険です。
Hibワクチンの重篤な反応はというと…
アナフィラキシーなんて有名ですが、正しく理解できているでしょうか。念のために聞いておいた方がいいかもしれません。
予防接種後の注意点は?おうちでの観察ポイント3点
帰宅してからは熱がでないかドキドキですね。とりあえず当日はお子さんをよく観察しましょう。
予防接種後30分以内にでる異常は危ないです。次のように注意していきましょう。
接種部位が腫れたりしてないか確認する
予防接種後すぐに腫れたりするのは珍しいです。
帰宅したらまずは接種部位のはれや赤みがないことを見ておきましょう。
まず30分は要注意!何があっても動けるように
重篤な副反応は、接種後30分というごく初期に発生することが多いです。
もしもの場合に備えて医療機関にすぐに連絡がとれる体制にしておきましょう。
もちろんすぐに受診ができるように、自宅か医院の近場ですごしましょう。
お出かけはそれからです
その日はどう過ごすといい?
その後の日常生活はどうでしょうか。
たとえばこんなことに気をつけたいです。
- 帰宅後も激しい運動は避ける
- 患部はきれいに保つ(シール綿は早めにとってOK)
- 熱がなければ入浴OK、接種箇所はこすらない
- 長湯は控える
こちらは大人でも基本同じです。
まとめ
ワクチン接種の注意点は以上です。おつかれさまでした。
ワクチンはすぐに反応が出るものもありますが、一部のもの(生ワクチンなど)は少し日が経ってからおかしな反応が発生することもあります。
なんとなくいつもと違う気がする…
そんなことがあれば電話で相談し、早めに診てもらいましょう。
長くなりましたが、最後までありがとうございました。