こんにちは、音奈です!
「もうすぐ予防接種だけど、Hibってどういう感染症だっけ?」「この予防接種って本当に効果があるんだっけ?」とお悩みではありませんか?
そこで今回は、Hibワクチンを受ける前に医療知識を確認したい検査技師さんに、Hib感染症とワクチンの基本情報をまとめてお伝えします。
この記事は次のような人におススメ!
・Hib感染症について詳しく知りたい人
・性状と検査での同定方法を復習したい人
・赤ちゃんにこの予防接種を受けさせるか考えたい人
Hib感染症は赤ちゃんにとって毒性の強い感染症なので、定期予防接種のひとつですよね。
今回の記事では「予防接種リサーチセンター」が発表している予防接種の副反応の例も紹介しながら、検査技師である筆者がHibに関する基礎知識と検査業務をまるっと解説します。
とはいっても、お堅くやるつもりはないのでご安心を。国試もありませんしね。
軽い質問形式で解説していますので、正解を思い浮かべながら読んでみてくださいね!
Hibが起こす感染症状
そもそもHibって何だっけ?
ウイルス?
そうじゃない、細菌の1つダヨ。
亜型がいくつかあり、特にb型は中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎などのほか
髄膜炎、敗血症、肺炎などの重篤な侵襲性感染症を起こします。
予防接種になってるよね。
乳幼児は重症化しやすいの?
乳幼児では発熱・嘔吐などを伴う化膿性髄膜炎を起こし、結果として敗血症や閉鎖性咽頭炎などへ重篤化し
最悪の場合、死亡原因となります。
だから予防接種で感染予防が重要なのね!
2013年4月から定期接種に定められ、その結果、この重篤な侵襲性感染症はほとんど見られなくなったそうです。公衆衛生としては高い効果ですね。
Hibの感染経路および病原性
死んじゃうような怖い細菌
Hibは普段どこにいるの?
どういう感染経路で体内に侵入するの?
健常人の上気道粘膜に常在している菌で、飛沫感染するダヨ。
それじゃあ誰でも発症する可能性があるのね…
子どもって熱を出すと中耳炎とかになるよね?病原性のイメージってそんな感じ?
単独でも肺炎、副鼻腔炎、中耳炎、敗血症、化膿性関節炎などを引き起こしますが、呼吸器ウイルス感染や慢性呼吸器疾患で二次感染します。
その場合は増悪因子となるので注意が必要です。
ということは、インフルやRSウイルスとかアデノウイルスとかにり患して苦しんでるときに、大人のくしゃみとかでHibを移したりしたら増悪するのか。怖いね…
定期予防接種になるのもうなずけるね
続いて検査業務に活かせるHibの性状などをお伝えします。
性状と同定方法
まずは微生物学のおさらいになりますが、
細菌にはグラム陽性・陰性や桿状・球状といった形態や
○○属や□□培地など
おぼえることが沢山ありましたよね。
どれだけ思い出せるか少し考えてみましょう。
Hibはヘモフィルス属に属するグラム陰性桿菌です。
発育因子としてX因子およびV因子両方を要求します。
2010年ごろからはβラクタマーゼの産生やPBP(ペニシリン結合タンパク質)の変化によりペニシリン耐性株が増加。
その他、b型菌は莢膜成分が他の型と異なり、バクテリオシンを産生するので病原性が強いと考えられています。
そんなHibを同定したい場合
選択培地は
チョコパイ!
ボケはいいですよ。
チョコ培(ウマ血もしくはウサギ血)
でしたよね。寒天培地の中に黄色ブドウ球菌が生えれば、その周辺に大きなコロニーを作ります(衛星現象)。
復習は以上になりますが、どれくらい正解しましたか。
微生物って大きさの割に奥が深いですね。
それでは最後に、予防接種のワクチン「アクトヒブ」について解説します。
ワクチン
予防接種では、乾燥ヘモフィルスb型ワクチンを使います
皮下注射で行います。はじめての針との出会いかもしれませんね。
使用するワクチンは
サノフィ株式会社:アクトヒブ
こちら、どういったものなのか気になりますよね。
サノフィ株式会社のサイトにある「アクトヒブ」の添付文書には、このように紹介されていました。
本剤は,インフルエンザ菌b型(1482株)の培養液から抽出精製した莢膜多糖体(ポリリボシルリビトールリン酸:PRP)と,破傷風菌(Harvard株)の培養液から分離精製した毒素をホルマリンで無毒化した破傷風トキソイドを共有結合した破傷風トキソイド結合インフルエンザ菌b型多糖の原液に, 精製白糖, トロメタモールを含む緩衝液を加えて希釈した後,凍結乾燥したものである。
添付文書(2020.10、第12版)
つまりこのワクチンは
Hibの莢膜多糖体(PRP)と破傷風トキソイドを共有結合したものなんですね。
なぜ破傷風トキソイドと結合させるの?
【 薬 効 薬 理 】
Hibの感染防御抗原は,その莢膜多糖体のPRPである。PRPはマウスに反復接種しても抗PRP抗体産生を誘導しなかったが,PRPに破傷風トキソイドを結合した本剤はマウスに対して抗PRP抗体産生を誘導し,その効果は反復接種によって増強された7)。
※主要文献は末尾にまとめて併記
添付文書(2020.10、第12版)
PRP単体だと小さすぎて、免疫系に認識されないのかもしれないね
誘導される抗PRP抗体ってIgG?
添付文書によると、本剤によって誘導される抗PRP抗体は主にIgG1だそうです。
IgGにはサブクラスが4つありましたよね。IgG1はサブクラスの中で最も主要なIgGです。
もう少し思い出したい方はThermo Fisher.comがおススメですよ。興味のある方は見てみてください。
これを打ったらほんとうに免疫増強されるの?
本剤接種後の血清には殺菌活性及びオプソニン活性が抗PRP抗体価に相関して認められた8)9)。
添付文書(2020.10、第12版)
※主要文献は末尾にまとめて併記
つまり、このワクチンを打つと抗PRP抗体価が上昇するけど、抗体価が上がれば殺菌・オプソニン活性が上昇するという正の相関が認められたってことだね。
抗体価が高ければ高いほど良いのはわかった。
どれくらい高い数値だと、殺菌・オプソニン活性を長く維持できるの?
外国で行われたHib全身感染症の疫学研究等により,Hibの感染予防に必要な抗PRP抗体価(感染予防レベル)は0.15 μ g/m L,長期の感染予防に必要な抗PRP抗体価(長期感染予防レベル)は1μ g/mLであることが明らかにされた10)。
※主要文献は末尾に
添付文書(2020.10、第12版)
感染を予防したければ接種後0.15以上、しばらく感染が予防されるには1以上必要なんだね。なるほどね~。
臨床成績についてもみてみましょう。
痛い思いするのに効果がないとか、ヤでし!
感染予防に必要な抗体価(0.15以上)はどれくらい維持されるの?
以下、サノフィ株式会社の治験成績になります。
国内臨床試験
添付文書(2020.10、第12版)
2~6 ヵ 月齢の健康乳児122例を対象に実施された臨床試験2)において,本剤を初回免疫として4週間隔で3回,初回免疫終了1年後の追加免疫として1回,合計4回の皮下接種における免疫原性が評価された。血 清の抗PRP抗体価を測定した結果,0.15μ g/mL(感染予防レベル)以上の抗体保有率,1 μ g /mL(長期感染予防レベル)以上の抗体保有率及びGMT(抗PRP抗体価の幾何平均)は下記のとおりであった。
初回 免疫 | 初回 免疫 | 追加 免疫 | 追加 免疫 | |
採血時 (評価例数) | 前 (119) | 後 (119) | 前 (116) | 後 (116) |
0.15 μg/mL以上の 抗体保有率(%) | 13.4 | 99.2 | 90.5 | 100 |
1 μg/mL以上の 抗体保有率(%) | 2.5 | 92.4 | 61.2 | 100 |
GMT ( μ g/mL) | 0.06 | 9.68 | 1.84 | 117 |
意外なことに初回免疫前に感染予防レベルの抗体価を持つ児は13.4%もいますね。
うちの子も本当は予防接種しなくてもいいのかも?10%に入る自信あるで!
ちょっとまって!それで長い間感染しないですむの?長期感染予防レベルの人はわずか2.5%だって!
じゃあ打とう!生後すぐに3回打っておけばとりあえず大丈夫よね?
3回打った直後は99.2%が抗体を獲得しているし、長期保有できるくらい抗体価が増えた人は92.4%か!9割以上の人が大丈夫らしい。
この抗体価って、どれくらいの期間長もちするのかな?
生後1年ごろに追加接種をする時、どうなっているかな?
感染予防レベルの抗体価は維持したいものですが、先ほどの表をみる限り、追加免疫前の測定では感染予防レベルの抗体価は90.5%に下がっています。約1年後におよそ10%の乳幼児が抗体価が減衰しており、感染リスクが上がっています。
要するに10人に1人は免疫を維持できていないってこと?
そうですね、しかも抗体価がかなり下がってくる傾向にあります。
だから追加接種が必要なんね。
もう1回くらい我慢するかぁ…
追加接種を行うことで、全員が長期感染予防レベルの抗体価を獲得しています。もう1年くらいは無事に殺菌してくれそうですね。
2) 富樫武弘:臨床と微生物 2005;32(5):511-516
7) 社内資料:マウスにおける免疫原性の検討
8) 社内資料:イスラエル免疫原性の検討
9) 社内資料:フィンランド免疫原性の検討
10) Ka¨y hty,H.et al.:J.Infect.Dis.1983;147(6):1100
以上、「アクトヒブ」の解説でした!
ワクチンが有効なのはわかったよ。でも副反応はどうなの?
予防接種リサーチセンターの資料には、ワクチンを打った後にみられる副反応について、次のようにまとめられていました。
月齢の小さい赤ちゃんなんて、毎日が不機嫌みたいなもんやし熱が出なければおんのじやわ♪
というわけで、あくまで筆者の感想ですが、Hibワクチンは予防接種の効果も高いですし、重篤な副反応が出なければ喜んで打ちに行きたいものですね。
それでも、一定数は厳しい副反応が見られるのも予防接種のおそろしいところ。
しんぱいだなぁ…
もしも不安な方は保健師さんに相談するのもアリですよね。一人で悩まず誰かに相談してみてください。
【参考資料】
サノフィ株式会社「アクトヒブ」添付文書(2020.10、第12版)
https://e-mr.sanofi.co.jp/-/media/EMS/Conditions/eMR/di/tenpu/acthib2020_01.pdf
予防接種と子どもの健康(2021年度版)
発行元 公益財団法人 予防接種リサーチセンター
シンプル微生物学(改定4版より)